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ラグビーヘッドライン

2019年11月16日(土) 日野選手のフランス研修レポート8(最終回)

試合後のマルシャン兄弟と共に(日野選手提供) 

 現在、フランスに滞在中の日野剛志選手からレポート8が届きました。約3か月間に渡るフランスからのレポートは最終回となります。ご愛読を有難うございました。日野選手は11月15日にルションにて無事にヤマハ発動機ジュビロのメンバーと合流しました。引き続き、日野選手の活躍にご期待ください。
(画像:マルシャン兄弟と共に。日野選手提供)

<フランス留学レポート8・最終回>
 8月10日に到着して早3か月が過ぎようとしています。
 最初は不慣れだった生活にも慣れ、毎朝クラブハウスに行き、チームメイトと汗を流し、練習帰りに馴染みのパン屋に立ち寄り、いつものおばちゃんがバゲットを持ってきてくれる、そんな生活にもゴールが見えてきました。

 生活面でもラグビー面でも慣れてきたのですが、なかなか試合に出るチャンスを掴めず苦しんでいました。
 自分としては、到着したばかりの頃よりもチームメイトとコミュニケーションがとれ、チームの戦術への理解もが深まっているのですが、フランス語が話せない「外国人選手」という立場では、同じポジションのフランス人選手とパフォーマンスに大差がない場合、コミュニケーションの面でフランス人が起用されます。
 日本のトップリーグでも外国人選手は同じ状況で、出場枠の関係もあるので、頑張ってプレーしているトップリーグの外国人選手を心からリスペクトしています。

 やっと慣れてきたのにチャンスはまわってこないという状況のなかで、精神的に複雑な時期もありましたが、ノンメンバーとしてチームに貢献できることはあり、いつチャンスが来ても良いように準備を怠らずに、残り少ない貴重なフランスでのトレーニングを無駄にしないよう前向きに過ごしました。

最後の練習後s.jpg

 フランス代表がワールドカップが終わり、約2週間の休暇を終えて戻ってきました。
 スタッド・トゥールーザンではFW2名にBK6名の計8名がフランス代表から帰ってきました。彼らは日本を楽しんだ様子で「KOBEビーフが素晴らしい」(ちなみにフランス代表は神戸では試合を行っていませんが...)、「毎日のように富士急ハイランドへいった」「ヤマハとトレーニングしたよ」「強いスクラムだった」などなど聞いる私が嬉しくなるようなコメントが聞けました。

 そんな彼らが戻って来ての練習は私にとってもの凄く刺激的なものとなりました。
 プレースピードの速さ、パスやキックの精度、プレー判断。コミュニケーションの量、すべてにおいてハイレベルで、いつもと同じ練習でも、人が変わるだけでスピードや強度が上がりまるで別チームのように感じました。

 試合形式の練習中にラインブレイクしてフランス代表のメダール選手と1対1になり、思い切ってスピード勝負し飛び込みながらトライしようとしました。しかしトライ直前にメダール選手にボールを弾かれて阻止されました。練習中から簡単にトライをさせないプライドとボールを見事に弾くスキルの高さ、そして雨でボールが滑りやすい事を考えた判断力の高さ。世界トップレベルのプレーを体感した瞬間でした。

ロッカールームs.jpg

 フランス代表メンバーが戻ってきた試合は、私にとって最後の試合になりました。相手はクレルモン、昨年のTOP14の決勝のカードで両チーム合わせて10人以上のフランス代表を擁します。
 スタッド・トゥールーザンはワールドラグビーの新人賞に選ばれた21歳ヌタマックなど代表6名が出場し、ヤマハのリッチーも先発出場。私は残念ながらメンバー外でした。
 好カードということで、いつものホームスタジアムではなく収容人数の多いサッカースタジアムで行われました。試合はあいにくの雨、しかしスタンドはほぼ満員の3万人以上の観客で赤く染まりました。

3万人以上のスタジアムs.jpg

 試合内容は堅守と攻撃では個人技や多彩なパスワークでスタッド・トゥールーザンがクレルモンを圧倒。
 練習のときからの違いを試合でも目に見えるパフォーマンスで発揮しました。
 ファンは大盛り上がり、私も思わず席を立ってしまうようなプレーの連続で、このチームに南アフリカ代表からウィングのチェズリン・コルビが戻ると考えるとゾッとしました。ラグビーはFW、BKが噛み合って初めてチームとしてパフォーマンスが発揮できるというシンプルなことを思い出させてくれた私のラストゲームとなりました。

 あっという間に駆け抜けた3か月。留学する前に自分で決めたマイルールの3つとここで紹介したいと思います。

①ポジティブ 
②スマイル
③フランスへのリスペクト

 ①、②についてはフランス語が話せないのに大人しくしてたらチームメイトは誰も話してくれないと思ったので、常にオープンマインドを持ち、ネガティブな部分を周りに見せずに常に笑顔を心掛けました。
 そして自分から積極的にコミュニケーションを取ることで、言葉はうまく話せなくても、早い段階でチームに馴染むことができました。

 ③のリスペクトは過去2回フランスへ遠征に来た際に、この国の人たちの愛国心や誇りはすごいなと感じていました。なので挨拶だけでもなるべくフランス語を使い、チームメイトにお願いしてフランス語のレッスンを受けたりしました。他にもフランスの食べ物を見た目や匂いで決めつけずにチャレンジしました。おかげさまでリオレというお米を牛乳などで甘く煮たスイーツも最初は抵抗がありましたが今では好きになりました。

 この3つのルールを実行したことで、到着して2週間でのTOP14開幕戦スタメン出場など、この海外研修を充実したものにできました。
 しかし、滞在の終盤はなかなか試合に出られず、自分の実力不足、語学力不足を痛感しました。
 それでも腐らずに良い準備をし続けられたのはスタッド・トゥールーザンの選手たちのプロフェッショナルな日々の行動を目の前で体感できたからだと思います。

 フランスで学んだ事を活かし、自分自身まだまだ成長するために停滞することなく前進していこうと思えた海外研修でした。
 そしていつかプレイヤーとしてフランスに戻ってくるという夢が1つできました。

ジムの壁に書かれた歴史sjpg.jpg
 
 最後に、この3か月間を送り出していただいたチーム、職場、家族に感謝しています。有難うございました。
 そして私を温かく受け入れて下さったスタッド・トゥールーザン関係者、トゥールーズ在住の日本人の皆様に感謝いたします。
 成長した姿を1月から始まるトップリーグでみせられるように頑張ります。
 それでは皆さん、「グラウンドで会いましょう!」
 有難うございました!
 Merci! A Bientot!
ジムから見たグラウンドs.jpg
「次にスタッド・トゥールーザンに戻ってくる時は正式なTOP14の選手として...」
(撮影:日野選手)

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