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境川選手・野中選手インタビュー

佐賀工業高校からヤマハ発動機ジュビロに入団した、境川選手と野中選手。2人の九州男児のインタビューです。

境川選手・野中選手インタビュー

今回登場する境川選手と野中選手は共に佐賀県のラグビー名門校、佐賀工業高等学校出身のフォワード選手。高校ラグビーの世界か ら一気にトップリーグ選手となり、世界的なプレーヤーとの練習や海外コーチからの指導を受けるなど、大きな環境の変化を経験して きました。また、学生から社会人となり、自己責任の世界に身を置き、仕事を覚えながらラグビーのトレーニングを継続するという精神的に厳しい時期も乗り越えてきました。タフなラグビー選手に成長した九州男児二人のインタビューをお楽しみください。

‐‐ さっそくですが、今年の春を振り返っていただきましょう

境川 ● 僕は今年の1月明けに首の手術をしました。3ヶ月経ってジョギングを始めましたが、今度は足首を痛め、もう一度手術。リハ ビリは計画通り順調に進んでいますが、リハビリに始まり、リハビリで終わった春シーズンでした。

野中 ● 自分も昨年、右膝前十字の手術をしたので、ずっとリハビリでした。まだ筋力は戻っていませんが、春最後のフィットネステ ストの1500m持久走で社会人になって自己ベストを出すことができたので、この春はよくやったと思います。今は、筋力を戻すため、 けがをした足を重点的にトレーニングするなど、明石アスレティックトレーナーに聞きながらいろいろ取り組んでいます。

‐‐  2人とも今年はリハビリでスタートし、夏に完全復帰の予定ですが、ここまで支えになったものは

怪我からの完全復帰を目指す境川選手
(トップリーグ初出場を果たした三菱重工戦)

境川 ● 僕は、首のけがが一番大きく、それで実際にラグビーを断念される方も多い中、国内外のいろいろな話を聞き、手術をしてもう一度、トップリーグの舞台でやろうと決めました。復帰を支えてくれたひとつはトレーナーの存在です。組んでいただいたメニューで実際、グラウンドに立てた時や、「これをしっかりやれば復帰できる」という言葉は一番の支えでした。他にも、「若いから大丈夫 」という声をたくさんの方にかけていただき、自分に対してその言葉をずっと言い聞かせてきたし、良い意味で洗脳されました(笑) 。折れなかった心の強さは佐賀工時代の厳しい練習や、一つのミスに向き合う姿勢が大きく影響していると思います。ひたすら走ることも精神的に強くなる基礎を作ってくれたと思います。

野中 ● 去年は、結構大きなけがだったので、これまでの練習で一生懸命に積み重ねてきたものが、その時の自分のレベルより落ちてしまう、ただでさえトップの選手と差があるのにどんどん離れていく、という不安がありました。そんな時、高校時代の友達に相談したことが「頑張ろう」と思えたきっかけの一つでした。ある友達から、「トップリーグにいるだけですごいこと。お前はまだ若いし、 簡単にあきらめるのは早すぎる。もったいない」と言われ、環境面で非常に恵まれていることを改めて実感しました。高校時代に一緒の時間を過ごしてきた仲間だからこそ、その声は自分の心に響きましたね。あと、僕も境川さんと同じで「若いんだから」と言われ続けました(笑)。周りの支えは本当に大きかったと思います。

‐‐ 2人とも高校から社会人ラグビーに飛び込みましたが、今だから話せる入団時の苦労を

境川 ● どれだけ自分がやれるのか、というのを試してみたいと思い飛び込んだ社会人ラグビーでしたが、コンタクト(ぶつかり合い )の部分や、外国人選手との体重差に1年目は苦しみました。

最初は社会人ラグビーのレベルに圧倒
されたという野中選手

野中 ● 高校を卒業したら社会人のどこかでラグビーをやりたいなと思っていたところに、ヤマハから声をかけてもらいました。いざ社会人になってみて、ラグビーに対する考え方やスピード、コンタクトを含め全てが高校とは違い、上のレベルのすごさに圧倒されました。

‐‐ コンタクトに対する苦手意識をどのように克服されましたか

境川 ● 入社当時は体重が80キロぐらいでしたが、チームトレーニングや筋トレ、寮の食事を残さず平らげたことで、1年目に20キロ増えまし た。中でも高校時代、ほとんどやっていなかったウエイトトレーニングが一番大きく影響していると思います。体重が増え、体が大きくなったことで、フィジカルやコンタクトの部分で少し自信がつきました。地元に帰った時、「でかくなった」と言われた時など、自分が大きくなったんだと実感しましたね。体重が増えればスピードは落ちますが、僕はフロントロー(スクラムの最前列のこと)。スク ラムが一番重要です。現状の108キロがポジション的にもベストです。

野中 ● 境川さんが高校3年生の時はナンバーエイトでしたが1年後に自分が入団して、境川さんを見たら、すでにフロントローの体つきになっていて、びっくりしました。僕はどちらかと言うと、入団時から大きかったので、境川さんとは逆に、少し体重を落としました。調整して今は110キロ程度。これくらいがベスト、後は筋力をつけていきたいです。

‐‐  社会人になりたての頃は、仕事とラグビーの両立が大変だったのでは

野中 ● 仕事を覚え、さらにラグビーも覚えないといけない。サインプレー、ラインアウトといろいろ吸収することがあって大変でし た。

境川 ● 全体練習の時は、サインを書いた紙を見ることができない。でも他の人に迷惑もかけられない。ミスをした時、先輩たちは優しくて、“しょうがない”と言ってくれましたが、しっかり覚えて練習に参加している周りを見て、もっと自分も頑張らなければと思いました。覚えるコツですか? 見ただけではイメージできないので、体で覚えることです。

野中 ● 僕はとにかく、自分のポジションのサインだけに集中(笑)。

境川 ● 最初はそうなるよ(笑)。

野中 ● 最低限、自分の役割はしっかり覚えて迷惑をかけないようにすることがスタートでした。僕の覚えるコツは、仕事とラグビーの切り替えと集中。切り替えスイッチが上手く押せるようになったのは、仕事にもラグビーにも慣れてきた頃ですね。

‐‐ どれぐらいで慣れましたか

  2008年のオープン戦(対サントリー)で
スクラムを組む野中選手

野中 ● 慣れたといってもまだまだです。

境川 ● チームに馴染むのは半年ぐらいかかったような。

野中 ● 馴染んだ、というわけではありませんが僕は3年目の2008年春、サントリー府中グラウンドのサントリー戦で、亮さん(山村亮選手)が海外留学中、伊藤さん(伊藤雄大選手:現リコー)のけがで初めて3番を背負って試合に出ました。スクラムの対面は日本代表選手。最初はドキドキで、ビビリまくっていましたが、時間が経つにつれ、社会人でも通用する! という手応えを感じました。この瞬間ですかね、やっとチームの一員になれたような気がしました。

境川 ● 僕は入団して2年目、2006年のオーストラリア合宿で、中垣選手が短期留学していたウエスタンフォースと対戦した時ですね。 フッカーで出場しました。相手選手は当たり前ですけれど、全部外国人選手(笑)。外国人選手相手に下に行くタックルが出来たことや、スクラムを組んだ時に、やっていける感じを掴みました。

‐‐ 高卒入団の選手も少なく、入団当初は孤独を感じた時もあったのでは

野中 ● 去年は、けがやチームの強化方針変更のニュースなどが重なり、精神的に落ち込んだ時期もあって、ラグビーを辞めようかとまで考えたこともありました。でも、友達の励ましや今年、ようやく自分と同じ年の選手が入団したので何かが変わるかもと。新入団の3人は同じ年、自分の言葉で話せるのが一番大きいです。例えば、「飯、いこうぜ」とか(笑)。でも、ガンツ(長野正和)とシンゴ (伊東晋吾)は人見知りで最初、全然打ち解けてくれず、僕にずっと敬語で話をしてくるので、ちょっと戸惑いました(笑)。

境川 ● 僕の後に入団した選手に中園さんや五郎丸さんなど、佐賀工の先輩がいて、だから、「飯、いこうぜ」は、とても言えず逆に「飯、行こうぜ」と言われていました(笑)。野中の気持ちはよくわかります。昨年、同じ九州出身の高木(高木貴裕選手:現東芝、長崎北→筑波大)がいて、高校時代から知っていたので、本当に嬉しかったことを覚えています。今でも同じ年の岸(岸直弥)、井本(井本克典)、河本(河本明哲)がいるので話しやすいですね。同じ年の存在はすごく大きくて、ようやく重い荷物がおりたという感じがしました。

‐‐ 野中選手は、ひとつ上の学年に境川選手がいたことで安心し入団できたのでは

野中 ● 誰も知らない中だったので、境川さんがいてくれてすごく安心しました。

‐‐ 社会人になってから指導を受けたフォワードコーチたちから学んだことは

これまで色々なことを学んできた
という境川選手

境川 ● ちょうど3番をやり始めた3年目のフォワードコーチがサイモン(サイモン・カー氏)で、体の使い方など、いろいろ教えていただきました。2008年はスクラムコーチが浜浦さん(浜浦幸光氏、ヤマハOB)で、技術と合わせ、コミュニケーションの大切さを学びました。

野中 ● 僕の1年目はサイモンがフォワードコーチでしたが、スクラム練習に参加する機会はほとんどありませんでした。その後、浜浦さんから姿勢の低さや体の使い方を教えてもらいました。浜浦さんの時は他チームとのスクラム練習などが多く、非常にいい経験を積むことができました。そして、何といってもゴエさん(中越将通氏、現スクラムコーチ)。現役当時から今も、チームの盛り上げ方が上手く、すごい方だと思います。

 

‐‐ 海外での試合経験や外国人選手が在籍していたことで、語学も成長したのでは

境川 ● ちょっとしたコミュニケーションぐらいなら(笑)。ちなみに、僕の同期はブニバカ選手(マリカ・ブニバカ選手、2005~2006在籍)です。

野中 ● 僕は、ジェフ(ジェフリー・マカ選手、2006~2008在籍)と同期ですが、彼のおじ(イシトロ・マカ選手)がサニックスでプレーしていて、僕が九州へ帰省する時、一緒に帰ったりしていたので、良い英語のトレーニングになりました。

‐‐ 最後になりますが、夏合宿に向けた意気込みとファンへのメッセージをお願いします

境川 ● 9月のトップリーグ開幕まで2ヶ月を切りましたので、信頼を得られるようチーム、監督に見てもらえるよう、夏合宿の練習試合などで出場をアピールし、しっかりやっていきたいです。今シーズンの目標は「目指せ、トップリーグ全試合スタメン出場」と言いたいところですが、まず控えめに5試合。目立つプレーはできませんが、スクラムに注目してください。頑張ります!

野中 ● 僕はまだトップリーグに出ていないので、目標のひとつは夏合宿の練習試合出場です。そして、出場した試合で勝利に貢献したいと思います。また、少しでも多くの地域の人たちにラグビーを楽しんでもらえるように、そのためにも勝ちにこだわってプレーしていきたいと思います。勝つ試合を見せて、喜んでもらい、地域に貢献できれば最高です。今、僕がここにいることができているのも 、周りのサポートがあってこそ。勝利で恩返しをしたいと思います。応援、よろしくお願いします。

二人のスクラムに注目!!

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